種々のダイエット法を一挙に比較 糖尿病リスクを最も下げる食事は?
研究は、シンガポール国立大学公衆衛生学部とデュークNUS医科大学が共同で行ったもの。研究者が2型糖尿病のリスクを減らすために確実に効果があると考えているのは次の3点です―▼適切なエネルギーを摂り、食べ過ぎないようにする、▼野菜や果物、全粒穀物などの植物性食品の摂取量を増やす、▼加工肉などの動物性食品の摂取量を減らす、▼高カロリー飲料やお菓子などの糖質の多い食品を控える。いずれもシンガポール人や中国人を対象とした研究ですが、両国は日本と同じ南東アジア地域に位置しており、アジア人であるという共通点があります。体質は日本人に似ており、欧米式の食事スタイルが急速に普及し、運動不足が増え、結果として肥満や2型糖尿病が増えるなど、共通した社会環境をもっています。日本人にとっても参考になる情報です。
「シンガポール・中国ヘルススタディ」は、中国系シンガポール人を対象に、欧米式の食事スタイルや生活スタイルが、2型糖尿病やがん、虚血性心疾患(CAD)などの発症にどう影響するかを調査した大規模研究。研究チームは、欧米で考案され一定の評価を得ている「地中海式ダイエット」「DASHダイエット」「健康な食事インデックス2010」など、代表的な5つのダイエット法について検証しました。
地中海沿岸を中心に発達した食事スタイル。▼野菜、果物、穀類、豆類、ナッツ類など、植物性食品を豊富に摂る、▼不飽和脂肪酸の多いオリーブオイルを豊富に摂る、▼魚を週に2回以上食べる――といった特徴がある。
DASHとは「高血圧を防ぐ食事方法」のこと。▼塩分を控える、▼飽和脂肪酸を抑え、不飽和脂肪酸を十分に摂る、▼野菜は1日350g以上、▼全粒粉など精製されていない穀類を摂る、▼糖質を控える――といった特徴がある。
米国保健福祉省(HHS)などが策定した「米国人のための食事ガイドライン」に準じた食事スタイル。野菜や果物、全粒粉などの穀類、低脂肪牛乳などの乳製品、脂身が少ない肉、飽和脂肪酸ではなく植物油を摂ることを奨励している。
これらのダイエット法は、2型糖尿病や心血管疾患のリスクを減らすことを示した研究が多く、質の高い食事療法と考えられています。「高い評価を得ているダイエット法のほとんどは、全粒穀物、野菜、果物、ナッツ類、大豆、マメ類など、加工度の低い自然な食品を十分に摂り、赤身肉や加工肉を食べ過ぎず、高カロリーの清涼飲料を避けることを勧めています。こうした食事スタイルは効果があることが明らかになりました」と、シンガポール国立大学公衆衛生学部のロブ ヴァン ダム教授は言います。
研究チームは、165品目の食品について摂取量やパターンを調べ、これらに含まれる栄養素を解析し、5つの食事パターンがどの程度当てはまるかを調べました。 参加者は平均11年間にわたり追跡調査され、その後の追跡調査を含め、5,207人が糖尿病を発症しました。その結果、5つの食事パターンがあてはまるほど、2型糖尿病のリスクが低下することが明らかになりました。 これらの食事パターンとの類似性を示すスコアの上位20%に含まれる参加者は、下位20%の参加者に比べ、糖尿病リスクが16~29%減少しました。なお、喫煙者ではこの傾向は弱くなることも分かりました。「食事ガイドラインで健康的な食事を奨励することで、2型糖尿病や心臓病などの疾患のリスクを下げられることが示唆されています」と、この研究の主任研究員でデュークNUS医科大学臨床科学部教授のコー ウーン ピューエイ氏は言います。「今回の調査では、主食である米の摂取量と2型糖尿病のリスクの増加との関連は見られませんでしたが、精白された米を食べることは、玄米や全粒粉パンなどの全粒穀物の摂取を減らすことにつながります」と、ピューエイ氏は指摘します。米を主食とすること自体が糖尿病のリスクを上昇させるわけではありませんが、玄米などの精白されていない穀類に置き換えることで、2型糖尿病のリスクを18%減らすことができることが示されました。一方で、1日で1食の主食を赤身肉や鶏肉に置き換えると、糖尿病リスクは40%上昇するということです。